仮面の取れた公立王国 - 浦和の死角(2015-2016)

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※この記事の投稿日は3月19日です。

  • 主要校の東大合格者数
浦和 大宮 栄東 開智 公立 私立 県計
2015 27 10 9 11 62 38 100
2016 22 13 27 17 52 61 113

 さて、2013年に東大46人を達成した浦和ですが、その後、33→27→22と合格数を減らし、今年はとうとう県下首位の座を明け渡しました。
 私は、長期的傾向として、いずれ私立が浦和に並ぶことは予測できていましたが、東大35人ぐらいで並ぶだろうと思っていたのが、東大20台の攻防であっさり順位が入れ替わってしまったので、少し拍子抜けの感じがします。「埼玉私立にはまだ東大30人の実力はないから今年の公私逆転はないだろうと思っていたのが20人台でもう公私逆転が起きてしまった」という印象です。「東大合格発表2016」の「まだはもうなり」の第一号です。
 栄東も開智も中学受験で上位層の東京都流出を食い止めて、徐々に実績を上げてくるのはわかっていました。今年の数字は、躍進の時期が意外と早かったなという印象はあっても、数字自体に意外性はありません。問題はなぜ浦和が低迷してしまったかです。これは正直予測できませんでした。栄東の高入生から東大が10人も出たという情報があれば別ですが、ネットの掲示板の書き込みをみると、高入生は若干名のようです。こういうのは正確な数字は出なくても、多いか少ないかの情報は何となく出てくるものです。埼玉県の高校入試は県立高校の存在が絶対であって、埼玉県内の私立高校に上位層が大挙して流れるという事態は起きないでしょう。東京都の高校入試も都立優勢、私立劣勢になりましたから、高校入試でわざわさ劣勢の東京都私立へ流出が増えることも考えられません。
 となると高校入試で埼玉県内の上位層が薄くなっているという事態が考えられます。真っ先に、思いついたのは2012年の高校入試改革です。

 2012年から県立高校の入試が前期後期から一元化されて一発勝負になりました。これにより、浦和などの難関校に挑戦するのが難しくなり安全指向に変わりました。今までは、内申書が多少不利でも浦和に挑戦して、合格後、切磋琢磨して東大合格に到達していた層が、安全策で浦和以外の県立に行き、そこでは、浦和ほど上位層が厚くなく、競争原理が働かず、東大合格レベルまで到達しない可能性です。
 別の可能性は、埼玉県ではまだ中受ピークは過ぎていないかもしれないということです。中受ピークとは、毎年、森上教育研究所*1が公開する資料で、中学受験の参加数が一番多かったのが2007年、参加率が一番高かったのが2008年で、その代が卒業した2013年、2014年を境に、私立の実績が落ちていくという説です。実際、東京都では都立復権の根拠のひとつになっています。ただ、この数値は首都圏平均の数値で、個々の都県ではピークにずれがあることは考えられます。
 いずれにしろ、こういう分析は当事者が行うべきことであって、確実にいえることは、今回の栄東躍進により、埼玉県の中学入試は活性化するということです。だから、埼玉私学がいつまでも東大20人台で留まることはなく、浦和再逆転のためには、安定して東大30人台とか40人台というもっと高い目標が必要になってきます。あくまでも、埼玉私立を弱体化する改革ではなく、埼玉公立を強化するための改革をしてほしいものです。県全体で上位層の受け皿を増やすことが大切です。