トップ校の交代 - 単独選抜時代

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 単独選抜時代といいますが、要するに東京都が公立進学校の管理を放棄した時代です。1997年から2005年がそれに当たります。「公立高校から難関大学へ進学させる努力はいっさいしませんから、難関大学に進ませたいと考える家庭は、私立に行ってください」と宣言したようなものです。
 官憲のタガがなくなると、教育は商売の格好のネタに成り下がります。「私立にいかないと、中学受験しないと、いや小学校受験しないと、あなたのお子さんの将来は真っ暗です。公立中いや公立小なんか行かせると、お子さんは一生日雇い労働者です。」なんていう脅迫商法みたいなものです。テレビでは連日お受験ドラマが高視聴率です。グループ合同選抜制度が廃止になった1994年にドラマ『スイート・ホーム』が高視聴率をとったのも時代背景そのものでしょう。
 『教育費に金がかかるのは当たり前、その金を捻出できない親は甲斐性なし、甲斐性なしの子供は無能』まさに教育格差絶望社会の実現です。その結末は、中産階級を教育費で破綻させ、残った富裕層で高度な教育機関を独占、しかし、公平な競争を経ない富裕層の子弟は本来の努力を怠り、最終的に社会そのものが衰退に向かうわけです。

  • 表の公立首位校は首都圏限定、首位校、二位校が複数ある場合は前年度の東大合格者が多い学校を優先
全国首位校 全国二位校 公立首位校 公立二位校 参考
1997 開成(188) 学芸大附(111) 土浦第一(43) 千葉(37)
1998 開成(205) ○麻布(101) 土浦第一(27) 千葉(25) 岡崎(30)
1999 開成(165) ○灘(110) 土浦第一(30) 浦和(29) 岡崎(35)
2000 開成(166) ○灘(103) 浦和(32) 土浦第一(31)
2001 開成(175) △筑波駒場(96) 土浦第一(32) 千葉(27) 岡崎(31)
2002 開成(164) ○灘(94) 土浦第一(33) 浦和(28) 岡崎(36)
2003 開成(181) △筑波駒場(112) 土浦第一(32) 浦和(29) 岡崎(38)
2004 開成(177) 学芸大附(93) 土浦第一(29) 千葉(23) 岡崎(31)
2005 開成(170) △筑波駒場(105) 浦和(27) 土浦第一(26) 岡崎(28)

 東京都が公立進学校の管理を放棄したのですから、都内は私立一辺倒になります。そうなるといくら周辺県の公立高校が頑張っても、優秀層が都内の私立一貫校に奪われるのも時間の問題です。浦和高校が1996年に東大合格者半減で陥落し、そして、千葉高校も1998年に東大20名台まで落ち込みました。首都圏の公立高校の砦は茨城県まで後退を余儀なくされます。この時代の首都圏公立トップ校は9年間で7回首位を獲得した土浦第一高校になります。実をいうと真の公立トップ校は首都圏にはなく、はるか遠く愛知県の岡崎高校まで後退してしまうのです。
 単独選抜時代の終わりは東京都が学区を撤廃する直前の入学者が卒業する2005年になります。