受験の南北問題 3 - 公立中リスク

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 前回の記事で、費用対効果で費用ゼロで東大に合格する道を紹介しました。「公立中→公立高→東京大学」の道です。しかし、ここに大きく立ちはだかるのが公立中リスクです。公立中は基本的に学区が決まっており、選抜試験もありません。入学者はそのまま社会の縮図です。同じ社会の縮図でも、公立小との違いは、中学生は体格が既に大人に近くなっていることです。問題を起こしたときの影響も小学生の比ではありません。セレブが集まる文教地区の公立中でないかぎり、反社会的行為を行う同級生の存在を避けることは困難です。

  • 盗難、恐喝、暴行、いじめ、器物破損、授業妨害

 私立中でも同様の問題はあると反論がありますが、質も規模も全く比較になりません。個人的には、これらの被害から逃れる対処法をいくつか持っていましたが、10人の不良に対して、10通りの対処が必要で、100の事件に対して100通りの回避策が必要です。正直言って運です。確実に伝授できるものは何もありません。というより、思い出したくもありません。廊下を歩いて目が合っただけで無差別に殴りかかってくる、そういう世界です。

ドラゴン桜(17) (モーニング KC) 矢島勇介は龍山高校3年。刹那的な考えを持ち、不満があると直ぐに暴力に訴える生徒であった。もともと、裕福な家庭に育ち、インテリの家系だったために東大合格という目標が与えられると徐々に更正していく。しかし、実際に公立中にいる刹那的で暴力を振るう生徒達を更正するのは絶望的にまで難しい。多くの場合、問題児の親の考えから既に更正を阻んでいるのである。

 公立中の場合、費用対効果の費用がゼロであっても、効果がマイナスという場合も十分あります。効果がゼロであれば、学校に期待せずに、塾や独学で何とでも学習到達度を伸ばすことができます。ところが、効果がマイナスで、地頭が良くても交友関係によっては高校中退の道を歩む例だってあるのです。中学受験を支えているのはこういう公立中リスクでもあります。
 本来なら、今日の記事は、公立中の改善方法など提案したかったのですが、私は綺麗事や観念論は書けない性格なので、それらを除いたら、何も書くことがなくなりました。誰か「人のものを盗るな、人を傷付けるな、人の邪魔をするな」を公立中で教えていただける人はいませんか?それだけでいいのです。

2011/09/08 追記

 昨日は、現実の困難さを前に書くのを逡巡していましたが、ブログを進めるに当たって、あえて追記として明文化しておいたほうがいいでしょう。
 公立中を荒廃から立て直す現実的な解決策はあります。ここでいう現実的というのは、「現存する」という意味で「実現性が高い」という意味ではありません。学者や役人が現実で検証されたこともない理想を持ち込み、全てをぶち壊してきたのとは違います。
 現存する環境とは、地方の公立中にある環境です。首都圏でも公立小では依然として有効です。そうです。優等生を公立中に呼び戻し問題児と勢力均衡を図り秩序を回復するしかありません。問題児の更生は絶望的なまでに困難です。しかし、中間層は別です。優等生という勢力があるからこそ、中間層を問題児から切り離し、問題児だけを封じ込めることができます。
 優等生を強制的に人身御供にするわけにはいきません。優等生を自主的に公立中に呼び戻すには、高校受験で目標となる名門公立校の存在が不可欠です。

  • 実現性が低かろうが、日比谷高校の復活=公立中の立て直しなのです。

 都立復権は公共福祉の実現に向けた大きな流れであり、私学は、その公共福祉が実現したあとを見据えて今から己の立ち位置を見つけて動くものです。その流れが読めた私学が生き残り、その流れに逆らった私学が消え去っていくのでしょう。