傾向分析の連載も最後になりました。10年後を予測する『予言者達』を補足する予定で、傾向分析の表を作ったのですが、地域や制度ごとに顕著な傾向が出てしまったので、自分でも驚いています。もっと混沌とした数値がでると思っていました。ある意味で持論が補完されたとも言えます。「受験地政学」とでも呼びましょうが、進学校の盛衰は、地域や教育制度に一義的に支配され、各学校の自助努力は二義的なものに過ぎないということです。
だからといって、自助努力をしなければ、大波に呑まれて個性を失いますし、苦境に陥った学校群のなかでも、そこから抜け出す努力を怠れば、転落するだけです。
伸び | 2012 | 最大 | 最小 | 東 | 神 | 他 | 校名 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
-1.60 | 38.0 | 60 | 34 | ○ | 私・海城 | ||
-1.61 | 22.3 | 44 | 21 | ○ | 私・桐朋 | ||
-2.04 | 74.9 | 111 | 69 | ○ | 私・麻布 | ||
-2.05 | 17.9 | 49 | 18 | ○ | 私・武蔵 | ||
-3.08 | 57.3 | 93 | 54 | ◎ | 国・東京学芸大附 | ||
-3.95 | 11.9 | 63 | 16 | ○ | 私・巣鴨 | ||
-5.12 | -0.5 | 49 | 8 | ◎ | 私・桐蔭学園 |
さて、本題ですが、まず共学勢*1からコメントします。学芸大附属は、伸び率は毎年−3.08名、これは10年間で30名減ったことを意味します。不振の原因はいろいろなブログで言及されています。高校受験で都立と競合していることが指摘されています。ただ、都立と競合するだけなら、他の国立大附属も同じ条件です。ふと考えると、問題は内部進学制度にありそうです。毎年50%程度しか系列高校に進学できません。他は外部に出されます。他の国立大附属では少ないところでも80%、多いところは100%系列高校に進学できます。
いくら内部競争が学力水準を維持するために必要でも、半分が外部に出されるのでは、伸び伸びと学習する環境になりません。優秀な受験生に敬遠される理由になります。実績を立て直すには、学年の生徒数を調整し、内部進学率を80%以上まで保証することが必要です。そのためには、附属中と附属高校の施設を再編し有効活用する必要がありますが、実現性は薄いでしょう。
次は、桐蔭学園−5.12です。10年間で51名の勢いで減らしています。ただ、姉妹校の桐蔭学園中教が10年間で15名の勢いで増えていますので、差し引き36名です。学芸大附属を若干上回る程度です。これは学校の戦略なのでしょう。首都圏では、大規模校が一体化して進学実績を出すことはイメージ戦略として限界があり、小規模精鋭校を独立させることで生き残りを図っています。
残りの5校は、いずれも都内私立男子校です。印象的に最近不調だと感じていたのですが、ここまではっきりと数字に出るとは思いませんでした。詳細な分析は新規記事を立てることにします。