医学部コースについて 2 - 東大コース

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 医学部コースの複雑さを説明するのに、東大コースについて説明したほうが分かりやすいと思います。多くの中堅進学校は、習熟度別クラスを採用しています。その場合、最上位に医学部コースと東大コースを置きます。「東大○○○」のような露骨なネーミングは少ないのですが、履修する科目などから、実質、各校とも東大コースを用意しています。

1、受験時期の同時性

 受験時期の同時性というのはクラス管理上大きなメリットです。東大を目指す場合、センター試験、前期日程と受験時期は同じです。士気の高め方、健康管理も全て同じペースで行えるので、全員が同じ目標に向かって集中できます。
 これが、医学部コースでは保証されません。

2、難易度の平等性

 東大には6科類ありますが、理科3類を除けば、それほど難易度に差がありません。文科3類と理科2類は、相対的に難易度が低いのですが、それでも相応の努力が必要で、文科3類はA判定だったが、文科1類はC判定だったという二段階も難易度の差がつくことはありません。文科3類A判定の受験生は文科1類でもB判定以上の実力を持っています。難易度が平等なので、等しく努力するしかありません。
 ところが、医学部コースでは、難易度の平等性が保証されません。

3、フェール・セーフ

 しかし、東大一直線では、東大に失敗したときの精神的ショックが大きいのではないかと指摘があります。確かに、精神的ショックは個人の感受性なので、何とも言えません。ただ、東大卒でなければ、人生が変わるかと言えば、そうでもなく、一部の高級官僚の世界でもなければ、それ以外の大学卒と大した差はありません。早慶や一橋、東工大などの大学からも優秀な卒業生は多数出ています。大学入学後の努力のほうが、社会的成功に直結します。英語や会計の資格を持っていれば、漫然と過ごした東大卒よりも就職後は優位に立てます。
 では、差がないのだから、東大を目指して苦労するのは効率が良くないし、それなら、中学校や高校から早慶附属校へ入れたほうが有意義な時間を過ごせるという考えもあります。実際、早慶附属校が最難関という位置づけである高校受験では、進学塾がそういう価値観を植えつけることで、2月の第二週にある地獄の早慶受験週間*1に生徒を送り出します。
 でも、少し考えれば分かると思いますが、早慶卒で活躍している人は、東大や一橋、東工大を併願候補にして、最後の最後まで受験勉強を頑張っていた人が主流です。中には、附属校上がりでも目的意識を持って大学受験を上回る能力をつける生徒は一部にいるでしょうが、大半は漫然と過ごしていた生徒でしょう。早慶の附属校に入っただけで、早慶に大学受験で入った難関国立大学併願組みと同じパフォーマンスが出せると思うほうが間違っています。パフォーマンスは努力の量に比例するだけです。要するに、東大一直線で、東大受験に失敗しても、それまでの努力に見合ったリターンは必ず得られます。フェール・セーフは保証されています。
 ところが、医学部コースだと、それが保証されません。