予言者達 2012年度 東大合格者数傾向分析 1.5以上

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 前回、『予言者達』シリーズの検証用に2002年度から2011年度までの東大合格者数を一次回帰分析をした資料を置いたのですが、意外と現状を的確に表しているので、6回に渡ってデータの解説をしたいと思います。
 今回は「1.5名/年」以上の伸びを示す学校を紹介します。10年間にすると15名以上伸びた学校です。首都圏で該当校は5校です。
 まず、都立高校で高校募集だけの日比谷高校が10年間で30名以上の伸びを示しています。日比谷と言えばあの日比谷なので、解説の必要もないでしょう。どんなに楽観的でも、10年前に3名程度しか合格者がいなかった学校が最大で37名の合格者を出すと予測した人はいないでしょう。それは今後の10年間も同じで、誰にも予測はできません。
 確実に言えるのは、「必要性があれば存在あり」です。昨今は中学受験ブームで、何か中学受験に参加しない子供は、将来は知的職業に就かないと勘違いする人がいます。勘違いならまだ良いほうです。反例を紹介すれば納得します。ところが、「そう思い込みたい人」や「そうでなければならない人」も存在するのです。母親がそういう偏狭な価値観では、子供の価値観にも悪影響があるのではないかと心配します。掲示板に書かれるそういう意見の多くは、母親の振りをした塾関係者からだと信じたいです。
 現実は、公立中にもまだまだ優秀な生徒はいますし、その優秀な生徒は、高校で多くの優秀なライバル達と切磋琢磨しながら勉強する環境を求めます。その必要性が日比谷を存在させているだけです。
 今のように中学受験や私立中の費用は青天井で、一方、不況で子育て世代の所得が減る状況では、中学受験に参加しない、参加しても私立中に行かない優秀な生徒が公立中に増えます。だから、彼らは日比谷を目指し、日比谷の東大合格者数が増える、それだけの簡単な理屈です。それを否定しても無意味です。そういう社会状況になるんです。

伸び 2012 最大 最小 校名
3.14 33.5 37 3 公・日比谷
2.56 61.2 65 32 私・聖光学院
2.13 41.3 47 16 千◎ 私・渋谷教育学園幕張
1.62 17.7 23 1 私・渋谷教育学園渋谷
1.53 13.1 14 0 私・桐蔭学園中教

 次は聖光学院の2.56です。これも「必要性があれば存在あり」です。横浜市は現在370万人の巨大都市です。ところが市内に名門と呼ばれる私立はありませんでした。栄光学園横浜市内から通うことは可能ですが、鎌倉市の学校です。県立でも名門の湘南高校藤沢市の学校です。横浜市民から見ても、横浜市内、そして、横浜文化のふるさとである関内近辺に名門校が欲しかったはすです。そういうニーズを受けて、聖光学院の成長戦略が徐々に実を結び始めました。
 次には、渋谷教育学園の姉妹校が続きます。幕張校2.13、渋谷校1.62です。これも「必要性があれば存在あり」です。まず、渋谷教育学園は有力な私立校がない千葉県に進出しました。当初は競合もあったのですが、競合校は男子校や医進校のイメージが制約になり、共学で新設した渋谷幕張が急進しました。その成功を元に満を持して有力な共学進学校がまだなかった都区部に進出しました。それが渋谷渋谷です。
 最後は、1.53の桐蔭中教です。桐蔭というのは、もちろんあの桐蔭です。東大三桁合格校の桐蔭です。桐蔭の場合、陳腐になった大規模校のイメージを払拭するために桐蔭中教という少数精鋭の男子校を独立させました。小田急の町田近辺は住民の教育意識が高いのに、難関私立中空白地帯になっていました。桐蔭中教はそれを埋めるために新設されました。10年前には卒業生がいなかった学校です。既に、男子校では県下で4番手に地位を固めているので、神奈川県の男子校3強に食い込めるかが今後の鍵です。立地的にはその資格はあります。惜しむらくは、共学校という選択肢もあったはずです。