今回は、過去10年間で、毎年0.5名以上、毎年1.5名未満の伸びを示した学校を紹介します。まず、毎年1.0名以上の伸びを示した学校です。公立の大宮高校が1.36です。比較的保守的な教育行政のもとにある公立高校がこのような躍進をするのは非常に珍しいことです。大宮高校は理数科を持つ学校です。埼玉県に学区があったときも理数科だけは全県区でした。また、段階的に共学に移行してきたのも躍進の要因です。埼玉県の公立トップ校は、従来、男子校と女子校に分かれており、「必要性があれば存在あり」で、共学校の必要性と共に伸びてきました。
次は、同じく埼玉の開智1.20です。これも「必要性があれば存在あり」で、埼玉県には長らく有力な私立校がなく、そこで、春日部市(開智の正確な所在地はさいたま市)という交通の要衝に進出したことが急成長の追い風になりました。
浅野1.19は神奈川県の元気印です。神奈川県は教育改革が進まず、東京都と違い、私立校がますます元気になっています。
豊島岡1.10は、女子校全体の進学校化に伴い、女子御三家の併願校という位置づけで急成長しました。このレベルの学校で2月1日の募集をしていないのは珍しいことです。併願校戦略だけでは長期的な成長は難しいので、第一志望の入学を増やす努力が必要です。
早稲田1.07は、進学校と附属校を兼ね備えた学校です。完全附属校(早実、早大学院、慶應義塾)の人気と共に、このハイブリッド戦略が追い風になって、都内の私立男子校としては随一の伸びを示しています。
筑駒1.00は国立のコストパフォーマンスを追い風にしてこの10年では成長過程にあります。
伸び | 2012 | 最大 | 最小 | 東 | 神 | 他 | 校名 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1.36 | 14.7 | 16 | 3 | 埼◎ | 公・大宮 | ||
1.20 | 12.2 | 17 | 0 | 埼◎ | 私・開智 | ||
1.19 | 34.1 | 42 | 14 | ○ | 私・浅野 | ||
1.10 | 19.3 | 24 | 8 | ● | 私・豊島岡女子学園 | ||
1.07 | 16.7 | 16 | 5 | ○ | 私・早稲田 | ||
1.00 | 98.6 | 112 | 75 | ○ | 国・筑波大附駒場 |
次に毎年0.5名以上1.0名未満を紹介します。ここでも埼玉県の2校が上位に来ています。一校は栄東0.92です。栄東は大宮市という交通の要衝に位置した学校です。開智が春日部市付近なので、中央部と東部で微妙に競合を防いでいます。両者とも空白地区に進出したデパートのように、ライバルもなく、ここ10年では顕著な伸びを示しています。渋谷幕張も海浜幕張という交通の要衝なので、成長戦略の早道は空白地区に進出することです。
もう一校は浦和0.75です。首都圏で唯一公立トップ校として県内私立の挑戦から地位を守っている学校です。学区の廃止が追い風になり、一時期より合格数を増やしましたが、以前ほど県内での圧倒的な占有率はなくなり、今後の動向が注目されます。
伸び | 2012 | 最大 | 最小 | 東 | 神 | 他 | 校名 |
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0.92 | 10.1 | 12 | 1 | 埼◎ | 私・栄東 | ||
0.75 | 32.4 | 36 | 16 | 埼○ | 公・浦和 | ||
0.73 | 23.8 | 29 | 11 | ◎ | 公・西 | ||
0.64 | 14.5 | 16 | 8 | ● | 私・雙葉 | ||
0.61 | 13.1 | 18 | 6 | ○ | 私・攻玉社 | ||
0.58 | 10.6 | 14 | 3 | ◎ | 公・横浜翠嵐 |
西0.73は日比谷と並び、東京都の優秀な高入生を集めています。日比谷と校風が違い、立地も離れているので、西も多くの受験生が第一志望として志望してきます。今後も日比谷と並び、台風の目になるのは間違いありません。
次に、雙葉0.64と攻玉社0.61が続いています。雙葉は附属小学校を持ち、攻玉社は帰国子女入試に力を入れています。両校ともいわゆる併願校とは違う独自の生徒集めをしており、都内私学の中では好調です。
最後は、横浜翠嵐0.58です。これは、聖光と同じく、横浜市の中央部という立地が追い風になっています。ただ過去10年間で単年度最大合格数14名では物足りない状況です。