※この記事は2月10日に書いています。
順 | 校名 | 初二桁 | 人数 | 最高 | 人数 | 最終 | 登場 |
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238 | ◎海陽 | 2012年 | 13名 | 2012年 | 13名 | 2012年 | 1回 |
昨年の6月2日から始めた『東大二桁合格校列伝』の最終回は、愛知県の海陽中教です。最終回といっても、2012年までの登場校を紹介しただけで、2013年もまた、数校、新しい高校が加わるでしょう。だから本当の最終回ではありません。
しかし皮肉にも初回登場校の日比谷高校と海陽中教があまりにも対照的な性格を持っているので、最後に紹介するにふさわしい学校だと思います。
日比谷 | 海陽 | |
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設立年代 | 古い | 新しい |
設立母体 | 官 | 民 |
教育対象 | 庶 | 富裕 |
日比谷高校は設立年代も古く官主導で作った学校です。公立高校なので、さまざまな所得層に対して門戸を開いています。結果的に入学対策に教育費を掛けられる富裕層が有利になっても、庶民を排除したことはありません。誰でも目指せる学校です。
一方、海陽中教は、イートン校をモデルとして、民間が主体になって設立した学校です。全寮制であり、厳しく管理されます。一期生でいきなり東大二桁合格を達成したのは、この海陽中教が初めてです。ただし、学費も一般庶民が出せるような額ではありません。モデルとしたイートン校自体が、年間24000ポンド(約400万円)必要であり、海陽高校もそれに相当する額が必要です。エリート階層がエリートを育成するための教育機関と言ってもいいでしょう。
教育の効率化は常に矛盾するテーマを持っています。一般庶民から優秀な人材を発掘するのは理想ですが、それは雲をつかむような話で、しかも優秀な人材が出てくる確率は低い。そして、優秀な人材が頭角を現してくるときには、既に、それ相応の年齢になっており、その年齢からでは、語学など教育するには十分な期間が取れなくなります。それなら、最初から対象をエリート階層に絞れば、一般庶民よりは優秀な人材を発掘できる可能性ははるかに高いし、より低年齢から教育を開始できるので、完成度の高い教育ができます。
どちらのほうがより社会の発展に寄与するか?どうせ一般庶民から国を支えるような優秀な人材が出てくる可能性は低いし、発掘コストも掛かるから、『ゆとり教育』で最低限の技能さえ身につけてもらえばよい。エリート階層だけ重点的に投資すれば、国を支えるような人材はその中で確保できる。国としては最低限の教育投資で対外的に渡り合える官僚機構を維持できるわけです。
この結末がどうなるかもう結論は出たようです。既に教育現場は『脱ゆとり教育』に転換を始めました。
上の階層にいる人には見えづらいものがあります。確かにエリート階層のほうが優秀な人材の割合は高い。逆に、一般庶民では割合は低い。しかしゼロではない。問題は割合ではありません。絶対数です。優秀な人材の割合が低くても、一般庶民の分母数を考えると、エリート階層の優秀な人材数をはるかに凌駕する数の優秀な人材が市井に眠っています。それを発掘しないのは社会の損失であるばかりでなく、優秀な人材が反社会的な組織に利用される危険性が高まります。能力的に優秀な人材が常に道徳的に正しい行動を取れるわけではありません。彼らだって貧困の中で生きていくためには必死なのですから。