うろ覚えのドラマ評『素直な戦士たち』 - 3人の受験戦士たち

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※この記事は10月5日に書いています。

※私がこのドラマを見たのは中学生のときで、中学生の認知で理解した記憶で書いています。記憶から抜け落ちた重要な部分、ほかのドラマと混同した部分があるかもしれませんが、とにかく、ドラマ評を書いています。

 このドラマの見せ場は何といっても3人の受験戦士たちです。原作では長男と次男の二人ですが、ドラマには、第三の受験戦士として、甥(主人公の姉の息子)も登場させています。第三の受験戦士を登場させることで、受験観に深みを持たせています。

第一の受験戦士(主人公の長男)

 生まれたときからでなく、この世に存在さえしないころから、東大に合格することを運命づけられた受験戦士です。当然、幼児教育、小学校受験(筑附がモデル)すべて経験済みです。小学校受験に失敗したあと、公立小に進み、中学受験の準備段階でドラマが始まります。
 中学受験では、塾(四谷大塚がモデル)で常に最上位クラスに在籍して、私立一貫校(開成がモデル)に合格します。中学校入学までは、勉強一辺倒で躾けられため、対人関係がうまくいかず、同年齢の価値観についていけません、勉強以外の面では、精神的に幼く、奇行が目立ち次第に精神に支障を来たしてきます。
 勉強面も中学校の最初のころはトップクラスですが、高校生になったときは低迷していました。それでも、主人公は長男の我がままをすべて許し、高校二年生になったときに、大学受験に向けてマンションを借りて専用の勉強部屋を与えることになります。それが悲劇の結末の舞台となるわけです。

第二の受験戦士(主人公の次男)

 予定通り長男が生まれた幸福感から、夫婦の気持ちが高揚して授かった予定外の受験戦士、結果的に、長男と次男は年子となります。母親からは全く期待をされず、自由奔放に育ちます。性格もよく社交的で学校でも人気者です。(影では父親のサポートがあったのだと思います。)
 父親は、次男にも長男と同じように中学受験のチャンスを与えます。ただ形式的なもので、周囲では誰も合格を期待していません。塾(四谷大塚がモデル)では当初成績が振るいませんでしたが、めきめきと頭角を現して、結果的に、私立一貫校(開成がモデル)にギリギリで合格します。
 期せずして、兄と同じ私立一貫校に通うことになります。成績は振るいませんが、学校の人気者です。徐々に成績が上向き、兄にとって目の上のたんこぶ的存在になります。

第三の受験戦士(主人公の甥)

 原作には登場しない人物ですが、ドラマ内で非常に重要なセリフを残しています。チョイ役で登場時間も少ないので、その存在を忘れている視聴者も多いでしょう。主人公の長男が高校生になったときに、大学受験で浪人をしていたので、年齢的には三歳年上だと思います。
 主人公の子供たちが中学受験を経験し、私立一貫校に通わせてもらっているのと比べて、彼は、家では全く勉強に対する理解が得られません。浪人しても塾に満足に通うこともできません。家には家業があり、母親(主人公の姉)からもそんなに苦労して大学にいかなくても何とかなるよといわれる始末。それに対して、彼の怒りのセリフは「俺にだって東大にいく権利はある。叔母さん(主人公)のところみたいに塾に行かせてほしかった。」そして、こわばった表情で黙って部屋を出ていく母親。
 35年前のことなので、私は正確なセリフを覚えていませんが、このドラマの中で一番印象に残っているセリフです。一般的に、大人の常識では、受験は苦行、受験戦争は悪と思っています。だからこそ、学校群という制度で受験戦争をつぶそうとしたのでしょう。しかし、受験戦士たちは、「俺は戦って勝つ。だから武器をくれ」と訴え、そして、常に最も熱い戦場を目指します。若者ってそういうものですよ。積極的に受験戦争を戦いたい若者はたくさんいます。その場を奪うことなんてできないのです。
 脚本家が、なぜ原作にないこの人物を登場させたのか意図はわかりません。また、脚本家は私の解釈とは違う意図で入れたのだと思います。実際、私が中学生のときの感想は、「浪人してから勉強したって東大合格に間に合うわけないだろう」という単純なものです。ところが、実際に大学受験を経験すると、第三の受験戦士のセリフが非常に重く感じられるようになりました。
 その後、第三の受験戦士がどうなったか記憶にありません。大学に進学できたのか大学進学を断念したのか、ドラマ内でそのことを触れたのか触れなかったのか、どちらにしろ、彼の存在は、ドラマの展開からみてそれほど重要な扱いではありませんでした。