分数ができない若手技術者

スマホで表を見る場合、画面を横向きにし、必要ならPCビューにしてください。

※この記事は12月26日に書いています。

 前回の記事*1で、東大早慶調整率の計算式を書いたのですが、毎回苦労するのが分数の表記なんです。ふと、少し前の「分数ができない若手技術者」の記事を思い出しました。いろいろな立場の人がいろいろ意見を述べていますし、中にはゆとり教育学力低下を嘆いている人もいました。
 これって、単純にコンピュータによる表記法の欠陥なんです。コンピュータがなければ勘違いすることもありません。ゆとり教育云々で解けなくなったのとは次元が違います。 日本語用の文字コードには、半角、全角という概念がありまして、MS-DOS のころは文字通り半角は全角の半分幅でした。MacWindows が普及してからは、文字幅に融通が利くようになったので、今では、半角も全角も似たような幅になっていますが、一文字を表現できるビット数が異なるので、コンピュータの中では厳密に区別されています。
 まず、半角で使用できる四則演算子ですが、「=」「+」「-」「*」「/」なんです。「*」「/」なんて教科書には登場しない演算子で、「×」と「÷」の代用なんです。一方、全角ですと、文字種が豊富に定義できることから、「=」「+」「−」「×」「÷」と全て揃っています。問題なのが分数で、いまだにベタの打ち込みで、数字を上下に並べることはできません。ワープロや特殊なDTP言語を用いるしかありません。ベタな打ち込みでは、分数を便宜的に表現するには、半角では「/」、全角では「/」を使用することになります。

  • Tex での表現
    • x=9-3\div\frac{1}{3}+1
  • 半角での表現
    • x=9-3/(1/3)+1
  • 全角での表現
    • X=9−3÷1/3+1

 Tex は数式記述用に定義された言語なので正しく表現できますが、半角はそもそも演算子が足りないので、苦し紛れに丸括弧を使用します。全角は演算子は足りているのですが、分数が上下でなく左右に並ぶので、これが混乱の元になります。例えば、半角の「x=9-3/(1/3)+1」は、全角で表現すると「X=9−3/(1/3)+1」ですが、「/」を「÷」に単純に置き換えても問題なく、「X=9−3÷(1÷3)+1」となり、丸括弧を正しく展開できれば、「X=9−3÷1×3+1=9−3×3+1=9−9+1=1」となります。だから、半角しか使えない環境の人は意外と正しく解けるのかも知れません。しかし、通常の日本人技術者は半角と全角が混在した環境で作業をしているので、全角での表現「X=9−3÷1/3+1」から、そのまま「/」を「÷」に置き換えてしまい、「X=9−3÷1÷3+1」となってしまいます。となると「X=9−3÷3+1=9−1+1=9」になります。
 結局は、コンピュータ表記で分数の表記規則が定義されていないことが問題なのでしょう。実際「1/3」も分数の正式な表記ではありません。だから問題文は「X=9−3÷(1÷3)+1」とするか、「x=9-3\div\frac{1}{3}+1」とするかでなければ、問題文そのものが欠陥といえます。

  • まとめ
    • X=9−3÷1/3+1
      • 学校ではこのような「/」を使用した横並びの表記は教えない
    • X=9−3÷1/3+1=9−3÷(1/3)+1
      • 学校では「÷」と「/」の優先順は教えない
    • X=9−3×3+1=9−(3×3)+1
      • 一方、「−」と「×」の優先順は教えている
    • X=9−3÷1/3+1=9−3÷(1/3)+1=9−3÷(1÷3)+1
      • 学校ではこのような変換規則は教えない