東大理三級理一志望者

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※この記事は10月4日に書いています。

 9月24日の記事『国公立大学医学部2014 - 補正分布率』のコメント欄で読者から質問がありました。本文は『国公立大医学部医学科の「補正偏差値」記事について』*1で紹介されています。他にも興味深い記事がたくさんあります。

  • Q1.頭のいい子は、みんな東大を目指す
  • Q2.頭のいい子は、みんな医学部を目指す
  • Q3.頭のいい子は、みんな東大理三を目指す

 上記のような問いかけがあった場合、高度成長期で全ての産業が成長しているときは、Q1の問いかけに対して、「いや、でも医者を目指すなら医学部に行くと思いますよ」という反論も来るでしょう。低成長の時代になると、むしろQ2のほうが前提になって「あそこの子は頭がいいのに何で医者を目指さないんでしょう。」という問いかけに対して、「いや、純粋に学問が好きそうだから、生涯年収よりも東大で学者を目指すんでしょう。」という反論が来る時代になりました。もっとも「医者=生涯年収が高い」という等式が今後も成り立つかどうかはわかりません。
 ところが、東大理三合格圏の実力をもった生徒に対して、Q3に対する疑問を抱く状況はあまりありません。そもそも、近所にそんな子は滅多にいません。さて、よく、東大理三に末席(100番)で合格した学生よりも、東大理一に100番で合格した学生のほうが得点が高かったといわれることがあります。理一は募集定員が1000人以上の科類ですから、平均レベルや末席合格者は、いわゆる努力系の秀才ですが、上位に目を向けると、理三を凌駕する天才がそろっているということです。感覚的にはそれほど間違っていないでしょう。
 実は、2012年11月の駿台東大実戦模試*2の資料を持っていまして、理三の80%合格判定、60%合格判定の偏差値をもった受験生が、どの科類を第一志望にしていたか、断片的に紹介します。

偏差値 判定 理一 理二 理三 合計
72以上 80%合格圏 32人(35%) 2人(2%) 58人(63%) 92人
70以上 64人(41%) 5人(3%) 86人(55%) 155人
68以上 60%合格圏 116人(47%) 11人(4%) 118人(48%) 245人

 まず、80%合格圏の分布を見ます。理三は58人で全体の63%、理一は32人で35%です。理三が卓越していますが、それでも「東大理三級理一志望者」が理三の人数の半数より多くいます。60%合格圏まで対象を広げると理三と理一の志望者数はほぼ同数になります。この数値から「東大理三の末席100番よりも、東大理一の100番のほうが成績優秀」という都市伝説はあながち嘘とはいえません。
 また、私は偏差値よりも席次を重視していることから、偏差値70が合格圏の目安とみています。だいたい、東大実戦のB判定(60%合格圏)は118人なので、定員100人の理三では、そのうち18人が確実に不合格になるといういささか無責任な判定です。少なくとも理三第一志望者の中で100番以内に入る偏差値がないと安心して合格圏とは言えないでしょう。
 東大合格者に占める駿台東大実戦受験者の割合ですが、さすがに8割以上はあると思いますので、となると、目安となると偏差値は、理三第一志望者が86人いる偏差値70となります。この偏差値だと、理三55%、理一41%となり、両者拮抗とまで行きませんが、それでも、「頭のいい子は、みんな東大理三を目指す」という問いかけは成立しません。
 常識的に考えて、将来医学を目指すつもりもない、超天才の理一上位志望者が、何でわざわざリスクを犯してまで理三を志望しなきゃいけないんでしょう。彼らはそんな目先のことよりもずっと先のことを見据えています。