育児ネグレクトと教育ネグレクト(2014/5/25のコメント欄について)

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※この記事は6月22日に書いています。

 なかなか、記事の作成日が現実の日時に追いつかないのですし、現実に日時に追いついてから5月25日のコメント欄への返答をしようと思ったのですが、時間ばかりたたつので、何か返答を残したいと思います。

 コメント欄にはいろいろな意見が書き込まれていまして、個々に対する直接の返答にはなりませんが、思うところを簡潔に書きます。
 まず、学校の教育効果については2年前に書いた以下の記事が私見です。

 次に、本記事のテーマですが、最近ニュースで育児ネグレクトが社会問題になっています。健全に育つはずの子供が、親の育児ネグレクトに合い、最悪、命を落としています。通常、命を落とさないまでも、栄養不足、愛情不足、教育不足により、大人になってからも、健康な体、健全な家庭、健全な社会生活を維持できなくなり、犯罪や育児ネグレクトの再生産につながります。
 すでに、育児ネグレクトの一つに「教育不足」を挙げましたよね。普通の親であれば、子供に満足な食事は与えますし、休日には遊園地に連れて行ったりして愛情を注ぎます。では、教育はどうでしょうか?自分が勉強嫌いだったから子供も勉強が嫌いと決め付ける親、塾へのお金が払えないから子供を教育環境から遠ざける親、奨学金や特待生などの教育費特典があるのに調べようとしない親。こういうのを教育ネグレクトと呼ぶのは呼びすぎじゃないかという指摘もあります。
 実際、私の親も教育には無関心でしたが、親に対する不満もありません。それは、公立高校から難関大学ルートが、私の学区には存在していたからです。親に頼らなくても、高校受験までは鉛筆と広告の裏紙*1で何とかなりましたし、高校に入ってからは、優秀な同級生と情報交換をすることで、大学受験対策もできました。同級生だって私と同じ境遇のものが多数いました。
 では、これが、中高一貫教育と私立校に独占された地区だったらどうでしょう。教育ネグレクトの家庭では、15歳の子供には何の選択肢もありませんよ。優秀な子供は私立に行けという意見もありますが、まさか、15歳の少年・少女が、教育に無関心な親を説得して、私立に行かせてもらったり、奨学金の手続きをさせたり、塾代を稼ぐために自ら新聞配達やコンビニのバイトをしたり、できるわけないでしょう。18歳の大学生なら年齢的にそれも可能ですが、15歳の高校生にそれを強要するのなら、社会的教育ネグレクトです。公立高校には受験対策やエリート教育なんて必要ないんだという意見もありますが、そういう人は親の教育ネグレクトに対して対案を出すべきだと思います。
 私は、このブログで中高一貫教育や私立校の存在は否定していません。それらへの過度の依存への批判と、公立高校からの難関大ルートの必要性を説いているだけです。残念ながら、私立校からの広告費に頼る教育メディアでは、教育ネグレクトの問題を扱わないから、このブログで細々と公立校を扱っているだけです。
 最初は簡潔に書くつもりでしたが、何か説教臭くなりましたね。どちらにしろ、本当に受験情報で必要なのは、私立校の広告費にまみれた提灯記事ではなく客観的なデータによる進学校の紹介だと思います。最後に進学校を選ぶのはその地域の住民です。

補足

 単独の記事としては言及していませんが、高等教育機関が私学に独占されたあとに何が起きるのかは、以下の記事で触れています。

そして、公立という障害を排除したあとに私学がやることは価格カルテルによる授業料の大幅値上げです。ここは忘れてはならない重要な点です。私学というのは教育機関であると同時に営利企業でもあります。「公立中→公立高→東大」というルートを維持するのは私学を目指す人にとっても大切なことです。「公立しか利用できない貧乏人は、高度な教育機会は必要ない」とネットでは匿名で本音を語る人がいますが、私立独占の価格カルテルが、やがてあなたのお子さんの教育機会も奪っていくのです。

 ちなみに、日本の教育メディアは触れませんが、既にアメリカの大学はそういう状況になっています。卒業後、多額の奨学金を返さなければいけませんし、教育ローン破産も珍しくありません。それなのに、よくもヌケヌケとこれからは海外大学だと騒ぎたてるもんですよ。卒業までの総費用も公開しないし、日本の大学と違って、真面目にやれば確実に4年間で卒業できる保証もない。かりに中退した場合は、20歳を超えた高卒が、どうやって日本社会に復帰するつもりですか。現地で皿洗いのバイトから一財を築く予定でしょうか。海外大学を否定はしませんが、そんなものは大学の短期交換留学や大学院からでも十分です。

*1:昭和の時代では、両面印刷は技術的にコストが掛かったので、片面印刷の広告も多く、裏紙は計算用紙に活用できた。