東大推薦入試の結末 - 東大生のアイデンティティ

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 前回書いたように、推薦入試で恩恵を受けるのは、帰国子女と、女子に限定されると思います。帰国子女は現在でも特別枠で受け付けています。数学オリンピック高得点者はあえて避けるような気もします。
 少なくとも戦後、筆記のみの入試制度になってからの東大生のアイデンティティとは、同じ筆記試験で合格したというだけです。だからこそ、貧富貴賎老若男女を超越した一体感があるのです。どんな金持ちでも特別入試枠がないところにアイデンティティがあるのです。
 相対的に優秀な生徒が多い名門校は推薦入試に消極的でしょう。学校側も特定の生徒を優遇することを嫌がるはずです。となると、推薦入試の主力は東大に1名合格するかしないかの学校になります。特に、私立高校にとっては売名に使える制度です。しかし、それで合格した生徒が本当に東大生のアイデンティティを持ちえるでしょうか、逆に無名校から合格した生徒には常に「スイセン」という疑惑の目を向けられます。無名校出身でも大半が筆記で入学した生徒ですが、無名校というだけで嫌疑が掛かるのは確かです。
 以前、『 東大生の9割はいらない子なのさ*1』で書きましたが、東大という大学は優秀な学生を集めながら、9割は捨てる大学です。現状でも1割を選別して「あのレベルに過ぎない」のです。それが、象牙の塔にいる素人同然の認識眼で推薦入学者を増やしても現状で厳選された1割より優秀な人材が取れるとは思えません。
 推薦入試という、受験側も選考側も多大なる労力を強いて、しかも受験側の学校では人間関係がズタズタになるような制度で、なおかつ、東大生内でもアイデンティティの分裂を生む制度です。恐らくその非効率性から数年で廃止に向かうでしょう。

(補足)

 今でも後期入学者という特別枠があるのではないかと反論がありますが、後期入学者というのは、前期入学者から見ても「自分も前期の出来栄え次第では後期入学者のほうだったかもしれない」という一体感はあります。今回の推薦合格者のように、最初から二次試験免除の先行合格者とは違うのです。