都立復活の布陣 - 重点校か中教校か

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 『都立復活の布陣』連載で、以前私が都立中高一貫校に厳しい意見を*1書いていたにも関わらず最近は甘いのではないかというコメントが来ました。実際、人間が丸くなったのが一番の原因ですが、都立中高一貫校の実績が出てから、白鴎は3年間、他校は2年間、経ったので、都立中高一貫校の実力が大体わかってきたので結論を出す前に様子を見ようという気になっています。
 東京都の教育行政は非常に興味深い選択肢を用意したと思われます。今後、重点校が有利か中教校が有利かわかりませんが、共学校に限定すると中学受験も高校受験も都立に勝負あったなという気がします。都内の私立共学校は大学附属校などの付加価値がないと今後は厳しい情勢です。
 まず、東早慶率5%以上の学校と都立(順位付き)と私立(共学校限定)で紹介します。重点校7校はすべてベスト10入りしています。
 青山高校は東京都の基準では、重点校降格に対して執行猶予扱いらしいですが、東早慶率では他の重点校に引けを取りません。青山という場所柄、早慶重視になるのは仕方ありません。センター、国立大、現役重視の現在の基準では過小評価されるのでしょう。仮に重点校降格になっても、特別推進校の指定は受けるでしょうから、進学指導体制は今後も維持できると思います。新宿高校の躍進を見ていると、都民は重点校、特推校の枠組みよりも、過去の伝統で学校選びをしています。指定枠が何であれ青山高校の人気は今後も維持できると思います。

校名 卒数 早慶
1 日比谷 315 29 163 144 33.07%
2 西 326 34 185 77 27.76%
3 国立・都立 322 22 114 55 18.43%
4 小石川 158 5 56 33 16.03%
5 戸山 321 10 114 47 13.91%
6 桜修館 154 6 44 17 12.34%
7 八王子東 323 9 77 34 10.27%
8 青山 285 1 90 34 9.59%
9 両国 196 5 47 14 8.93%
10 立川 310 5 61 27 7.80%
校名 卒数 早慶
11 九段・区立 139 2 20 15 7.43%
12 武蔵・都立 200 1 53 5 5.75%
13 白鴎 230 5 27 8 5.29%
14 新宿 318 2 50 19 5.24%
  • 重(重点校)、中(中教校)、併(併設校)、特(特推校)

 1位から11位までをみると、両国を除き、重点校と、卒業生が出た中教校が全て含まれています。また1位から13位までだと、重点校と、卒業生が出た中教校、併設校で占められているのが興味深いものです。中教校と併設校の比較では明らかに中教校のほうが有利になっています。併設校は中途半端な位置づけなのでしょう。特に桜修館は、都立大附属時代は20年以上も東大合格者を出していませんでした。中等教育学校という制度を活かして、いきなり重点校に匹敵する実力を持った学校になりました。

校名 卒数 早慶
◎渋谷渋谷 199 12 85 39 19.68%
穎明館 171 4 69 49 18.62%
帝京大学 170 1 81 26 13.63%
◎ICU 240 3 43 32 8.68%
◎成蹊 327 51 31 5.76%
国学院 492 3 72 31 5.15%
  • ※はそれぞれの種別のカウンターパートを意味する。

 次に都立重点校、中教校、併設校と競合すると思われる私立共学校を紹介します。ICUと成蹊は系列大学のレベルも高いので内部進学者も多く、完全な進学校とは言えません。渋谷渋谷、穎明館帝京大学国学院久我山が対抗ですが、これらの学校の勢いが全くありません。埼玉・千葉・茨城県の私立共学校が好調*2だったのと全く対照的です。
 渋谷教育学園渋谷は2007年に東大23名という大躍進を受けて偏差値が急上昇した学年が来年以後大学受験を迎えるので躍進の可能性はまだあるでしょう。しかし、入学時偏差値では下位に位置する一月校の伏兵(市川、栄東、開智、東邦)に東大合格者数で並ばれてしまったのは明らかに勢いが落ちている証拠です。皮肉にも、都立中高一貫校民業圧迫と一番批判したのは、渋谷教育学園の理事長でした。先見の明がある彼なら、幕張校と渋谷校の現在の明暗は読めていたでしょう。

校名 卒数 早慶
15 国分寺 318 1 45 11 3.83%
16 駒場 356 51 13 3.60%
17 大泉 199 31 5 3.43%
18 国際 229 27 9 3.28%
19 竹早 280 39 7 3.15%
20 富士 200 24 3 2.50%
校名 卒数 早慶
21 三鷹 159 11 5 2.20%
22 三田 317 1 27 4 2.17%
23 小山台 317 1 32 1 2.10%
24 南多摩 155 6 5 1.76%
25 北園 153 1 8 1.53%
26 武蔵野北 241 16 2 1.38%
27 日野台 325 19 2 1.18%
28 町田 393 21 2 1.06%
29 上野 310 14 1 0.86%
30 小松川 319 9 3 0.78%
31 小金井北 279 11 1 0.78%
32 北多摩 153 7 0.76%

 この表は、東早慶率5%未満の都立校です。東早慶率が5%未満になると学校の実力というより、一部の優秀な上位層が早慶の合格数を稼いでいるという状況になりますので、順位は参考資料です。ここにはまだ卒業生を出していない中教校が含まれますし、現状の実績よりも将来性や地域性を買われて、併設校になったり、特推校の指定を受けた学校もあります。
 重点校か中教校かの回答としては、中学受験で共学指向なら中教校、高校受験で共学指向なら重点校というように選び分けることになるでしょう。東京都としては、中学受験率が上がろうが下がろうがどちらにも対応できる体制になったわけです。中学受験率は別の要因で下がり続けていますので、小石川や桜修館の実績が今後伸びたとしても、重点校は高校受験のパイが広がる限り、優秀層を集めてさらに躍進していくでしょう。