公立トップ校への一極集中か、公立トップ校による雁行現象か

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 学区撤廃の影響は、東京都も埼玉県も公立トップ校への一極集中で終わるのではないかと、多くの受験関係者は予測していました。
 実際のところ、東京都も埼玉県も、日比谷一極集中や浦和一極集中が一時的に起きたあとに、二番手校、三番手校も同様に伸びてきて、全体的に公立トップ校の後追いを始める雁行現象が起きています。
 では、なぜ受験関係者は予測を外したのでしょうか、それは彼らの願望がそう予測したかったからです。受験関係者の多くが、私立中学を基盤として受験産業に関わっています。彼らにとってスポンサーである私立中学に不利な予測は深層心理で避けるものです。東大の合格者数は毎年一定の数で固定されています。このレベルではゼロサムです。しがって、どこかが増えれば、どこかが減るということです。
 受験関係者にとって、公立全体の合格者が増えるということは私立全体の合格者数が減るという予測になります。しかし、そんな予測をするとスポンサーに不快感を与えてしまいます。だからこそ、学区撤廃は公立のなかのコップの中の争いで、公立全体の東大合格者数は増えずに、トップ校への一極集中が起きるという予測しかできませんでした。
 ところが、現実に起きたのはトップ校による雁行現象です。ではどこが公立に喰われたのでしょうか。それは皆さんご存知のとおり、高校受験です。公立トップ校が魅力を高めると、多くの受験生が公立高校への受験対策を真剣に始めて、公立トップ校が残念な結果でも、二番手、三番手の公立校にも優秀な生徒が流れていくという図式です。それとは対照的に高校受験で急速に私立の退潮が始まっています。東京都の場合はもちろん都内での移動ですが、埼玉県の場合は、もともと県内私立へ流れていた数は少なく、都内私立に流出している層を県内に引き戻している状況です。
 この現象が神奈川県や千葉県に波及するかはわかりません。多少、県民性が違うのかもしれません。東京都と埼玉県はもともと武蔵という同一の国であり、しかも東京都と最長の県境を接する埼玉県は東京都と同じ現象がでやすくなります。