東大二桁合格校列伝 - 前半終了:都市伝説としての高校閥

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※この記事は11月10日に書いています。

 サンデー毎日には、受験閑散期には高校閥の特集が一年に一回は載ります。実際、週刊誌の受験特集は、「この記事を読み終わったら、あなたは子供に必ず中学受験をさせざるをえない気持ちになる。」という暗黙の結論がありますから、文章は読み流す程度でいいのですが、しかし、資料的には良くここまでそろえたなと関心するものがあります。だからこそ、文章を読まずに資料だけを眺めていると、全く違う事実が浮かび上がってきます。

 さて、高校閥の特集で典型的なのは、官庁局長級の出身高校別のランキングです。例えば、「日比谷閥残存。教駒閥は弱く、教附閥は強い。灘閥、栄光閥、麻布閥は強いが開成閥は弱い。」こういう調子です。もろに実在の高校名を出してしましましたが、2年ぐらい前に読んだ記事です。
 これを読むと、「開成と筑駒はあれだけ東大合格者を出しておきながら、官庁では冷遇されているんだな。難易度の割りには報われない。子供を高級官僚にするなら他を検討すべきかな」と判断する読者も一部でしょうがいるでしょう。雑誌の記事は、もうそういう論調で書いていますから、。
 普通に考えれば、「局長級の平均年齢はいくつだよ」と突っ込むはずです。仮に55歳とします。大学入学時は18歳、いまから37年前です。大体1975年前後です。1970年代の東大合格者数ランキングを知っていれば、こんなくだらない誘導には乗せられないはずです。 多少の上下はあっても、これは当時の東大合格者数ランキングの順位と大差ありません。
 高級官僚にあるのは、高校閥でなく東大閥です。しかも「東大法学部閥」です。仮に高校閥があったとしたら、日比谷が東大合格者数を激減させたあとも、日比谷閥が継続しているはずです。そんなことはありません。東大合格者激減とともに日比谷閥も後継者が途絶えました。
 もともと派閥による排他原理が働くのは、単一の派閥が主要ポストを独占することであり、現在の開成ですら、東大生に占める割合が6%程度なので排他原理が働くほど独占力はありません。そんなもの2位3位連合によって軽くひっくり返せるからです。そうなると排他原理よりも均衡原理が働き、弱小派閥出身でも大派閥に担がれて主要ポストに付くことが可能になります。
 ただ、上記は高校閥があるという前提で書いていますが、そもそもそんなものはないでしょう。
 余談ですが、私立名門大学における附属校出身者の高校閥については、判断材料が少ないので、ここでは保留します。
 ところが、その茶番である週刊誌の官庁局長級出身高校別ランキングにこそ、本当の意味での高校閥が隠されているのです。