初年度東大9名合格の私立岡山高校について

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 『仮面の公立王国 9 - 新設中学校の進学実績』のコメント欄で私立岡山高校について情報提供いただきました。返信するには長くなりそうなので新しい記事にします。
 地方には中高一貫校一期生でいきなり東大9名合格を果たした学校があります。「2名であれば大金星」という私の主張とあまりにも掛け離れているのでどう解釈すべきかという質問です。

校名(開校) 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98
岡山('82) 9 7 10 9 7 3 - 7 - - -
岡山白陵('76) - - - - - - 9 - 13 9 24

 上記の表は岡山高校と岡山白陵の1988年から1998年までの東大合格者数推移です(空欄は資料が入手できなかっただけでゼロという意味ではありません)。開校年度は岡山白陵のほうが早かったようですが、中高一貫校として実績を出し始めたのは岡山高校のほうが先です。当時の資料が集まらないので推測でしか言えませんが、次の情報が鍵を握ります。

 さて、本題ですが、地方では初年度で東大9名合格があるのに、なぜ首都圏では初年度で東大5名合格程度で大騒ぎするのかという疑問です。実は、これこそ、私が首都圏と地方の進学校比較をしない理由です。私自身地方公立高校の出身者なので、地方における進学校がどういう基準で評価されるか知っています。首都圏とは異なります。だから、所属地方が異なる高校を気安く比較すべきではないというのが結論です。週刊誌の全国高校ランキング特集には批判的です。要するに次のことが言えます。

  • (1) 閉鎖通学圏人口で地区トップ校の最大実力は決まる
  • (2) 二番手以下は偏差値輪切りになり、校風や教育内容による変動はわずかである
  • (3) 地区によって、進学校の指標となる対象大学が違う

 進学校を評価して意味があるのは(2)の項目だけで、わずかな変動の積み重ねで地位を徐々に向上させていくしかありません。それも7年周期という非常に息の長い努力の積み重ねが必要です。大半の学校経営者がその胆力を持ち合わせず、途中で頓挫し漫然と入学者の数合わせをして経営を続けているのが首都圏私学の現状です。
 前置きが長くなりましたが、私立岡山高校について私なりの解釈です。もちろん、首都圏と自分の出身地以外の受験事情には詳しくないので、誤解もあると思います。

  • A1、岡山高校は地区トップ校であったが白鴎高校は地区トップ校でない

 岡山高校は新設校でも当時地区トップ校であったため、東大合格層を集めやすかったのですが、白鴎高校はそうではありません。岡山市にはそれなりの閉鎖通学圏人口がありますから、地区トップ校が東大9名を集めるのは難しくありません。
 一方、首都圏の新設校がいきなり地区トップ校になることはありません。まず併願校として選ばれます。それも、地区トップ校からみると併願校を三段重ねするぐらい差があります。偏差値輪切りに支配される併願校が東大合格者を出すには、実力がありながら上位校に不合格か、大器晩成型の生徒に期待するしかありません。初年度でそのような生徒を獲得する確率は相当低いものです。

  • A2、同じ東大合格でも首都圏と地方では意味が違う

 私の出身地を例に出すと、普通に優秀な生徒は、九州大学に行きます。もう少し野心のある生徒は、京大、阪大を目指します。東大を目指すのはどちらかという異端です。また女子は距離的な抵抗感から相当優秀な生徒でも関西以東の大学は行かず九大に進学する場合があります。次に、西日本は国立大学医学部の定員が多いので、偏差値自慢の医学部指向は少なく、本来の医者志望者が目指します。また、早慶のような私立は、転勤族である支店勤務者の子息が目指すような大学です。地方では、首都圏の人が思うほど東大や早慶の合格数に大きな意味はありません。同様に、岡山県には岡山県の指標があるはずです。
 一方、首都圏における東大合格数は大きな意味を持ちます。東大に5年に1名程度受かるような学校では、校舎に東大合格者の垂れ幕が下がるような状態です*1。首都圏は東大合格者数には敏感ですし、早慶合格数にも敏感です。東大合格者が出ただけで次年度の志望者が急増し、それを継続すると7年周期の好循環につながります。

*1:2012/11/18追記: ドラゴン桜の最終回には実際にそのシーンがあります