仮面の公立王国 9 - 新設中学校の進学実績

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 前回予告した埼玉県の新設中学校の進学実績です。独立した記事にしたのは意味があって、これは都立一貫校の成長過程を占う意味で貴重な先行資料だからです。
 以下の表は、中学校を新設してから、年期ごとの平均東大合格者数です。参考情報として最大数と、渋幕の合格数も紹介します。現在埼玉県には中高一貫校が27校でそのうち2校は公立です。また、まだ卒業生を出していない学校が5校あります。1990年以前に設立した私立中学校は4校で、必ずしも一貫教育を意図したものでないので、除外すると、対象校は16校です。
 一期生が卒業した学校は16校で、東大合格者数を平均すると、0.6名、二期生が卒業した学校は13校で、その平均東大合格者数は1.3名です。以下、最長で14期生が卒業した学校が2校あります。東大合格者数には該当項の高入生も含まれますが、中高一貫校を導入したことによるシラバスの成果は、当然、高入生にも反映されますので、それも一貫教育の成果とします。

期生 校数 平均 略図 最大 渋幕
1 16 0.6 # 4 6
2 13 1.3 # 7 1
3 13 1.7 ## 6 2
4 10 2.2 ## 7 3
5 9 1.8 ## 4 3
6 8 2.8 ### 9 8
7 5 3.0 ### 7 12
期生 校数 平均 略図 最大 渋幕
8 5 2.2 ## 4 12
9 5 5.8 ###### 17 13
10 3 1.7 ## 2 16
11 3 3.7 #### 7 22
12 3 6.0 ###### 11 20
13 3 3.0 ### 6 16
14 2 6.0 ###### 12 38

 白鴎ショック*1の記事で書いたように、初年度、東大5名というのは好調な出だしだと分かります。埼玉の初年度最大値4名(西武文理)と渋幕の6名も大半が高入生(しかも浪人)の出した数字だと判明しているので、白鴎の中高一貫一期生だけで5名はやはり異常値だと思います。何もない新設私立であれば、平均すれば1名も合格者を出せません。7期生までは大学合格実績がでないので、塾の広報に頼って、生徒を集めるしかありませんが、それでも、平均3名まで合格者数を増やしています。8期生以後は、大学合格実績が出たあとの入学者ですから、自力で集めた生徒の実績です。好不調の波はありますが、平均で6名合格者を出すまでに成長しています。
 また、成功例として紹介される渋幕でも経過年数では埼玉新設一貫校と大差ありません。7期生、8期生の実績で差をつけましたが、9期生では埼玉の最大値(開智)に劣っています。渋幕の例は特別な成功ではなく、競合のないフロンティアにしっかりとした体制で一貫校を作れば、優秀な生徒が集まってくるということを示しています。都立一貫校も同じく公立一貫校というフロンティアに進出しました。
 都立一貫校は、現在、白鴎一期生東大5名のところから始まったばかりです。そして埼玉県の新設私立一貫校と違い、伝統のある名門校が多く、授業料が必要ないという有利な条件がそろっています。おそらく、7期生までに二桁合格を出す学校は出るでしょうし、8期生から14期生の間に30名を越す学校も出るでしょう。
 一貫校の成長は非常に長い周期で慣性を持つので、2、3年程度の実績で鳴かず飛ばずと断定するのは早計です。埼玉県の私学も数年前は「鳴り物入りで登場しながら鳴かず飛ばす」と言われていたのですが、ここ3年できっちり実績が伴ってきました。