仮面の公立王国 8 - 新設中学校へのハードル

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 今まで見てきたように、埼玉県の新設中学校には高いハードルが設けられています。これは、東京都の私立校が、教育行政の都合で都立高校が自滅し、楽に優秀層を吸収できたのとは大きな違いです。

  • 地区トップ公立校が健在である
  • 東京都私学の影響が強い
  • 中学受験で入学者の質を確保するには募集人員を絞る必要がある

 そして、一番大きなハードルは受験生側が持つ地元私学へ対する抵抗感でしょうか。親が埼玉県出身者の場合、どうしても、新設中学校の前身となった高校に対する印象を引きずってしまいます。それも進学実績を上げている現在の姿でなく、自分が高校時代に見ていた当時の私立高校の姿です。公立高校が受け入れてくれない生徒が集まる学校もありました。逆に、当時はインテリ層や富裕層が通っていた都内の私学がまぶしく感じていたことでしょう。その意味で、都内指向になりがちです。また県内私学による肝腎の進学実績も、その印象を覆すほど現時点でははかばかしくありません。この進学実績については後日掘り下げます。
 さて、このハードルに対して、新設中学校は次の体制を取ることになります。全てがこの体制を取っているわけではありませんが、進学実績を伸ばしている私学が採用している体制です。

  • 成績優秀者に対する授業料減免(地区トップ校への優位性を確保するため)
  • 高校受験の維持(生徒を確保し経営の安定化と地区トップ校不合格者へ受け皿を提供)
  • 中入生と高入生の完全分離(両者を合流させるコストよりもカリキュラムの簡素化を優先)
  • 中入生だけの完全中高一貫コース(都内私学と同等のカリキュラムを提供する)
  • 高入生に特化したカリキュラム(中入生との完全分離により、割り切った大学受験指導が可能)
  • 外部塾に依存しない体制(ダブルスクールが常態化している公立校と都内私立校への牽制)

 こういう体制を批判したり嫌ったりする人も多いですが(ただし、感情的、理念的に嫌う人もいるなかで、実は、この体制が私立校の標準になると塾業界にとって打撃なので、保護者の振りをして否定的なコメントをする受験産業関係者が存在することも頭に入れておいてよいでしょう)、それしか新設中学校が生き残る道はありません。そして現に生き残って実績を上げていますから、これを評価して支持する人も多くいるのでしょう。