仮面の公立王国 5 - 学区制廃止

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 保守的な埼玉の教育行政のなかで唯一大きな改革は学区制廃止です。学区制は1979年からの導入されました。8学区と4個の小学区がありました。隣接学区からの受験枠も多く、公立高校が各学区毎に孤立することを防いでいました。唯一、当時の大宮市と川越市の間に設けられた越境禁止線だけは、交通生活圏を分断し、荒川を境とした埼玉県東部と埼玉県西部に分かれるようになりました。それぞれの地区トップ校は浦和高校川越高校です。熊谷高校春日部高校も有力校ですが、通学圏人口や隣接学区との競合で少し不利な状況でした。
 ここで例外もありました。理数科だけは学区制限がありませんでした。その理数科を1991年に設置した大宮高校が独自の地位を確立することになります。

  • 埼玉東部:地区トップ校、浦和(男子校)、浦和一女(女子校)
  • 埼玉西部:地区トップ校、川越(男子校)、川越女子(女子校)
  • 全県学区:大宮理数科(男女別学校)

 皮肉にも大宮が理数科を設置した翌年の1992年に都内北部三校、巣鴨、城北、豊島岡の東大合格者数の合計が埼玉主要三校、浦和、川越、大宮の合計を上回りました。こうなると、地区別、男女別でトップ校が細分化されている埼玉県の公立高校では太刀打ちしません。都内私学の草刈場になります。10年以上も対策されませんでしたが、2004年に法令改正を受けて*1ようやく学区廃止の決断をします。2007年から学区廃止後の実績が出始め、現在は以下のように再編されました。

  • 全県学区:地区トップ校、浦和(男子校)、大宮(共学校)

 学区廃止以後、浦和、大宮以外の県立トップ校はどうなったかというと、予想に反して、春日部、熊谷、浦和一女川越女子はいずれも過去10年間では東大合格者数最多記録を出しています。川越も2番目の記録を出しています。現在は過渡期間ですか、地区トップ校への集中度を高めた結果、高校受験全体のレベルが上昇することは短期的にありそうです。長期的には予断を許しませんが、少なくとも、早慶MARCHの合格数では学区制廃止以後も各校とも実績を伸ばしています。

*1:2011/10/04 修正「重い腰を上げて」→「法令改正を受けて」