偏差値操作の主流は複数回募集です。例年以下のような募集を行っている学校があるとします。
募集日 | 募集人員 | 合格者数 | 進学者数 | 歩留まり | 結果偏差値 |
---|---|---|---|---|---|
1日 | 100 | 500 | 100 | 20% | 56 |
2日 | 100 | 1000 | 100 | 10% | 58 |
計 | 200 | 1500 | 200 | 13% | 57 |
この学校は、1日と2日で200人確保すればよいので、個別の募集日で進学者数と募集人員が厳密に一致する必要はありません。歩留まりが前年並みと仮定すると以下のように変更することができます。
募集日 | 募集人員 | 合格者数 | 進学者数 | 歩留まり | 結果偏差値 |
---|---|---|---|---|---|
1日 | 100 | 750 | 150 | 20% | 55 |
2日 | 100 | 500 | 50 | 10% | 60 |
計 | 200 | 1250 | 200 | 16% | 56.25 |
結果偏差値がどのように推移するかはそのときの受験者層によりますが、前年度と同じ受験層であると仮定します。合格者数を減らせば、それだけ、低偏差値層の合格が減るので、結果偏差値は上がります。逆に、合格者数を増やせば、低偏差値層の合格が増えるので結果偏差値は下がります。この仮想モデルでは、2日目の結果偏差値を60に上げることに成功しました。
確かに、この学校は偏差値表では上位に来て、学校の格付けが上がったような気がします。ところが、代償もあるのです。まず、総合格者数ですが、このケースでは、前年度よりも減り、入学金の収入が減ることになります。お金の件は一時的な損なので、無視できますが、肝腎の平均学力が低下してしまいます。1日目で低偏差値層の合格を増やして、2日目で高偏差値層を不合格にしているのですから当たり前です*1。これは6年間ずっと影響を引きずります。
この学校は結果偏差値が急上昇しているから数年後に実績が上がるはずと数年前から言われながら、一向に実績が上がらない例があります。からくりを知ってしまえば、納得行く例がたくさんあるはずです。
*1:1日目と2日目の説明が逆になっていたので、訂正しました。ご指摘ありがとうございます。