若干古い資料になりますが、貴重な資料なので、テキスト化しておいておきます。まず、1550万円以上は青天井なので平均値は計算できません。鳩山家のように小遣いだけで毎年1億8000万円もらえる家庭も東大生にはいます。そもそも、年収における平均値(アベレージ)は無意味です。9人が1000万円でも1人が10億円の年収があれば、10人の平均年収は1億円を超えてしまいます。この集団に億ション10室用意しても、実際に購入できるのは1室のみです。不動産屋のマーケティングとしては失敗です。一方、中央値(メジアン)は概数で出せますので、計算しておきます。
〜450 | 〜750 | 〜950 | 〜1050 | 〜1250 | 〜1550 | 1550〜 | 中央値 | |
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1984年 | 14.9% | 34.9% | 20.0% | 12.6% | 8.6% | 5.0% | 4.0% | 752万 |
1990年 | 9.8% | 22.6% | 17.8% | 18.9% | 13.2% | 9.0% | 8.7% | 947万 |
1995年 | 5.7% | 14.2% | 15.5% | 22.2% | 17.4% | 13.5% | 11.5% | 1015万 |
2000年 | 10.9% | 17.6% | 16.2% | 22.5% | 12.1% | 10.5% | 10.4% | 973万 |
2001年 | 10.6% | 19.2% | 15.9% | 23.1% | 11.6% | 9.6% | 9.9% | 968万 |
2002年 | 10.1% | 18.2% | 15.2% | 22.6% | 12.8% | 10.6% | 10.6% | 970万 |
2003年 | 13.9% | 20.4% | 16.5% | 21.9% | 8.5% | 9.2% | 9.6% | 940万 |
なぜ、この資料を置いたかというと、受験界には次の2大敗北主義があるからです。
- 富裕層でなければ東大を目指すのは難しい
- 難関私立中でなければ東大を目指すのは難しい
全くの嘘とはいいませんが、「富裕層」「難関私立中」「難しい」と主観的な単語ばかりで、具体的な基準が見えてきません。これに具体的な数値を当てはめます。
- 2003年時点で、東大生の半数は、親の年収は940万円以上である。
- 2011年度で、東大合格者の半数は、東大合格数20名以上の高校出身者である*1。
「コップの残り水」という心理テストがあって、残り水が半分の場合、「たった半分しかない」「まだ半分もある」と考えるかによってその後の行動が変わります。
- 2003年時点で、東大生の半数は、親の年収は940万円未満である。
- 2011年度で、東大合格者の半数は、東大合格数20名未満の高校出身者である。
東大生の親の年収の中央値は、1995年の1015万円から、調査のたびに減少して2003年では940万円になっています。これは、日本全体がバブルの後遺症で可処分所得が減っていることが理由です。東大生の親だけが年収を減らしているわけではありません。そう考えると、2011年に同様の調査があれば、940万円を下回っていることは十分考えられます。日本企業は社員の昇給を抑制していますので、同じ年齢層を調査すると年々年収は減っています。
大学生の年齢は20歳前後ですから、父親の年齢は50歳半ばでしょう。となると、大企業に勤めていれば、非金融業でも900万円という年収はホワイトカラーとしては平均的な数値です。「東大生の親の平均像は、大企業のホワイトカラーである」ということになります。また、年収450万円以下には、退職によって収入がなくなった家庭も含まれます。ただ、彼らが現役時代に高給取りだったかと問われれば、常識的に考えれば、半数は年収900万円以下だったはずです。
実際、年収900万円以上の家庭、東大合格数20名以上の高校というのは、全体からみれば遥かに少数派です。少数派にも限らず、東大合格者の半数を占めているのですから確率の論理では有利です。ただ、それに該当しないからと言って東大合格が不可能かと言えば、それは全く嘘で、まだ1550人も枠が残されています。
そして、年収900万円以上の家庭、東大合格者20名以上の高校出身者が特別枠で入学しているわけでなく、彼らとて「鉛筆と紙と努力」のみで入学試験に臨んでいます。それ以外の受験生と条件は全く同じです。多少、塾や家庭教師で有利になっていても、そんなものは努力の総計で見れば微々たるものです。「うちはサラリーマン家庭だし、中学受験でも御三家なんか到底及ばなかった。だから難関国立大を目指すなんて言い出すのも恐れ多い。」という会話を聞きますが、最初からハードルを下げるような発想は、子供の可能性を潰すようなものです。
そして、次の一文こそ最大の敗北主義かもしれません。
- 無理をして上を目指しても失敗したときに傷つくだけだから、最初から無駄な努力をしないほうがいい。
そう思う方は『東大コースのフェール・セーフ*2』の記事も参考にしてください。