水増し合格は大学が悪い

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週刊朝日
週刊朝日20110708

 週刊朝日の2011年7月8日号は、現役進学者特集です。現役でかつ進学者だけなので、真の高校の実力を知るにはいい指標なのかもしれませんが、一部の上位校のデータが欠けていて、網羅性という意味では残念な資料になっています。
 なぜ、こんな調査に手間のかかる指標が必要になったのかというと、数年前に、関西の私立高校で上位数人が一人当たり同一大学で数十もの合格数を稼いだからです。大学側も商売なので、数十の学科を併願するためにその数だけ受験料を請求するはずで、それだけでも100万円以上の出費になります。進学できる大学と学科は一つだけにも関わらず、常識的に個人がそんな出費をするわけないので、当然、高校の関与が疑われました。
 こういう極端な例があったために、首都圏の私立高校にも調査が入り、学校側の号令で、2,3個多めに出願している実態が分かり、新聞を賑わす事件になりました。不幸にも所属自治体から警告を受けたり、補助金を削減された高校が出る始末です。
 「不幸にも」と書いたのは、私はこの件で私立高校側を責める気になれないからです。本来このような出鱈目な出願を可能にして受験料収入を当てにしている私立大学側が悪質なのであって、高校生、特に合格実績が学校の命運に関わる私立高校にとって、そのような制度があれば利用するものです。まして、首都圏で、2,3個多めに大学に出願した例など、中学受験でも良くあるケースです。本命校に備えて、場慣れや安心のため各家庭が数万円の出費をすることに何の問題があるのでしょうか?受験戦略としてフェアな方法です。
 そういう経緯もあって、週刊誌がこのような特集を組んだり、高校側が週刊誌の取材に応えるのに余分な労力を割くのは気の毒でなりません。本来、高校側は生徒の合格まで面倒を見ますが、生徒が学科にいくつ合格しようが、どこに進学しようが高校側が関知することではありません。
 また、保護者側がこの資料を必要とするのは、学校選択のためだと思います。自分の子供が実際に大学受験をするのは、中高一貫なら6年後、高校募集なら3年後です。はっきり言いますと、水増し合格に利用される学部は碌な学部ではありません。そんなところに少なくとも受験3年前に関心を持つ必要なんてありません。どうせ、同時多数出願を可能にしている学部は、他にも推薦やAOで定員を確保したり、筆記受験枠を減らして、偏差値を高止まりさせるような策を弄しています。お子さんが、受験するまでに世間の評価を下げているでしょう。仮にその学部に進学しても、企業の採用担当者からは、「あの学部卒は学力が不明なので採用まで適性検査を数回する必要がある」と言われるでしょう。大学側が短期的な利益のために、自ら権威を落とし、首を絞めているだけです。
 そういう学部や大学を数を無視して、本当のポイントを押さえれば、実進学者を知らなくても、高校の実力は分かるものです。