マラソン効果

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 中高一貫校の生活はマラソンに似ています。進学校の最終目標は大学合格ですから、中学一年生で全員同時にスタートします。ただ、6年間、大学受験ばかりを考えて学園生活を送るわけではありません。むしろ大学受験を忘れて日々の生活を楽しむものです。最初のうちは集団を形勢します。徐々に集団がばらつき、各自の学力のあった仲間と上位から下位まで多くの集団が形勢されていきます。高校2年生の頃から受験を意識し始めた集団がスパートを始めます。最後は仲間と励ましあいながらも、大学合格というゴールに向かって、自分自身との個人戦になっていきます。

 このブログでは以下のような状況が起きた場合、マラソン効果と呼びます。

  • (1) 中学一年生で東大合格確実の生徒を100人集めても6年後実際に合格するのは60人程度
  • (2) 難関校の中盤よりも中堅校の上位のほうが成績がよいこと
  • (3) 最下位合格者や補欠合格者でも6年後に成績上位に食い込めること

 まず、(1)ですが、マラソンで2時間10分以内で走れる選手だけ100人集めても、実際に2時間10分以内で完走できる選手は多くありません。
 首都圏の国立大附属校K校は、中学募集で120人高校募集で40人を募集し、それぞれで最上位の精鋭を集めています。入学時点では全員東大に合格できる位置にいます。しかし現状では東大に合格するのは6割程度です。中には燃え尽き症候群の生徒もいます。周りが優秀すぎて自信喪失の生徒もいます。走るの(=勉強)が馬鹿らしくなる生徒もいます。のんびりしすぎてスパートで失敗する生徒もいます。中学一年生から毎年10%ぐらい脱落してしまいます。高校2年生でスパートするときは60%しか仲間が残っていないものです。

 次に、(2)です。中学受験が大手塾によって体系化されたことにより、どうしても偏差値輪切り入学という現象が起きてしまいます。塾により偏差値65以上はA校、偏差値60〜65はB校、偏差値55〜60はC校と割り振られてしまいます。中には、通学事情、校風、縁故の理由により、偏差値65以上でもC校に入学する人はいますが、ごく少数の例外です。東大の合格者数で言えば、1、2人程度の影響しかありません。ところが、A校から上位30%が東大合格するのに対して、B校やC校やらも上位10%や5%程度が東大に合格することは珍しくありません。中学一年生の最初の時点で同じ偏差値であっても、難関校の中段にいるよりも、中堅校の上位にいるほうが6年後大学合格実績が良くなります。
 マラソンで例えると、持ちタイムが自分より速い集団のレースに参加してオーバーペースで脱落するよりも、持ちタイムが自分より若干遅めで、自分がペースメーカーになれるレースのほうが、結果的に好成績を残せるのと似ています。

 最後は、(3)ですが、入学試験は合格最低点を取る試験でもあります。合格最低点は相対評価なので、年度により上下しますが、学校側は、合格最低点を取れた入学者であれば、消化可能なカリキュラムを提供します。合格最低点付近の生徒を切捨てることはありません。その学校にはいれたということは努力次第で上位に食い込めるということです。(トップ3は、どこの学校でも別カテゴリですが)トップ10%までなら本人の努力で十分狙える位置です。トップ10%というのは偏差値で63程度です。どの模試でも努力すれば偏差値63までなら何とかなります。
 マラソンで例えると、大会出場記録さえクリアすれば、誰でも入賞するチャンスはあるということです。

 このような現象がありますので、中学受験でどこに進学しようが、大学受験から見れば決定的な要因にはなりません。