リトルリーグ症候群

スマホで表を見る場合、画面を横向きにし、必要ならPCビューにしてください。

 このブログの目的にひとつに、受験業界での「リトルリーグ症候群」の克服というのがあります。「リトルリーグ症候群」とは、幼少時からリトルリーグで野球の技術を磨いた都会の少年たちが、草野球の経験しかない地方の県立高校に甲子園であっさり負けてしまうという状況を言います。

(※ 最近は地方の甲子園代表も私立高校が多く、しかも都会から多くの野球留学生を受け入れており、やはりリトルリーグの人材輩出力は強いとも言えます。本職のリトルリーグの皆さん、誤解のある表現ですみません。)

 では、なぜリトルリーグ症候群かというと

  • 1、子供の成長には個人差があり、リトルリーグのセレクション方法では大器晩成型の選手を排除してしまう。
  • 2、リトルリーグ内での競争が熾烈であり、独善的な内部競争により、外界の流れが見えなくなってしまう。
  • 3、その結果、正しい方向への人材育成ができなくなり、予想外の敗北を喫してしまう。

 実は、今の首都圏の中高一貫ブームは「リトルリーグ症候群」という印象を持ちます。最近は都立高校が徐々に実績を伸ばしてきて、大器晩成型の秀才に学問への道を提供できつつありますが、ほんの5年前は、中高一貫校に入らなければ、一生、知的職業につくことができないという風潮でした。ところが、それだけ過酷な中学受験を経た首都圏の受験生が東大合格者の中で著しく割合を増やしているかと言えば、そういうわけでもありません。依然として地方の公立高校から多数の東大合格者が出ています。高度成長期以来、地方から多数の優秀な人材が首都圏に流失し、最近は、過疎化により若者の数も減っており、地元の大学を目指す若者も多く、しかも、地方で高収入と言えば、医師の割合が高く、医学部指向も都会より強いという、それだけ不利な条件が重なっているのに、地方からの東大合格者の合計は首都圏よりも多いのです。
 結局、首都圏の私立中高一貫教育は単純に首都圏の公立校から秀才を奪い取っただけで、その秀才を他の地域と比較して伸ばしているという確固たる事実はないのです。中学受験という過酷な競争が導入されて、何が良かったかというと、受験産業が勃興して雇用を生み出しということだけです。その反動として、とてつもなく高額の請求書が受験家庭に届くという仕組みができあがったのです。1990年代のバブルの頃なら、この状況でも何とかなりました。しかし、今はデフレ不況の21世紀です。こんな状況が長く続くことはないでしょう。その通りです。実は徐々にですが、様々な変化の予兆が出始めています。