書評: やっぱり公立! それでも私立?

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やっぱり公立! それでも私立? ?長女日比谷高校、次女私立中学受験失敗の母の奮闘と選択

 よく「我が子の御三家合格体験記」は話題になりますが、果たして、そのようなタイプのお子さんを我が子に持つような親はどのくらいいるでしょうか?御三家にチャレンジできるような子供であれば10人に1人、御三家と難関国立大附属中を楽々ダブル合格できるような子供であれば、100人に1人、いや1000人に1人以下かもしれません。
 そのような体験記を購入する人は、その中に我が子の成績を向上させるヒントがないかと期待するものです。また、体験記の著者も自分が採用した学習方法を切々と語ります。お子さんが一人っ子で、しかも、たまたま優秀であれば、当事者は自分の成功体験記に何の疑念も感じないでしょう。ところが、兄弟複数受験の経験があるほとんどの親が感じることは、同じ兄弟に対して同じ方法が全く通用しないという無力感です。上の子はできたのに、下の子はできない、上の子は運があった、下の子は運がない、上の子で苦労したから、下の子は大学まで受験のない学校に入れたい、いや、今後、子供の受験への関与を一切放棄したい、様々な思いが生まれます。稀に兄弟とも優秀、そして更に稀に兄弟毎に器用に対応を変えられる親が存在するかもしれません。でもそれは例外中の例外でしょう。
 本当の受験体験記とは、10人中9人以上が持つ無力感です。本書を読んで結論はすぐには出ないでしょう。しかし、ごく一部の成功体験記だけが受験情報ではありません。そして、その成功体験記でさえ、次のステップでは足枷になりかねない危険な予兆をはらんでいます。