最難関校の偏差値はこう決まる

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※この記事の作成日は3月27日です。

 大手塾による合格可能性偏差値というのがあります。受験生の合否を追跡調査した結果、模試の偏差値毎に合否の割合を出し、ロジスティック曲線に近似して、割り出したものです。でも、実際のところ、それほどきれいにロジスティック曲線に近似できるわけでもなく、予想外の合否もあるので、大雑把な数値になるのが実情です。
 偏差値50あたりの学校の場合、通学時間、学費、校風など様々な要素が関係して、多様な受験パターンがあるので、合否の実績から帰納的に求めるしかありませんが、最上位層が目指す学校は受験パターンは限られており、それぞれの学校の合格者数で偏差値がほぼ決まります。
 例として、開成、麻布、筑波駒場で計算してみます。

  • 2018年入試の実合格者数とその実際比と近似比
募集人員 実合格数 実際比 近似比
開成 300 388 1.000 1.000
麻布 300 378 0.974 1.000
筑駒 120 128 0.330 0.333

 開成、麻布、筑駒の実合格者数の近似比は、きれいに「1:1:0.333」になります。受験パターンで次の仮定を行います。

  • (1) 最上位層は2月1日は開成と麻布を受験し、開成受験者のほうが偏差値が高い
  • (2) 最上位層は2月3日は筑駒を受験する。

 これは仮想モデルであり、実際には、開成合格圏でも麻布を受験する人は多数います。ただ、私の知っている麻布OBは、こういう仮想モデルで下位に置かれても、一々気にしない度量があるので、他の麻布関係者からも文句がくることはないと信じます。

  • 最上位層の席次と合格校の例
1-120 121-240 241-360 361-480 481-600 601-720
2月1日 開成 開成 開成 麻布 麻布 麻布
2月3日 筑駒

 360位以内であれば開成に合格し、720位以内であれば、麻布に合格します。一方、筑駒は120位以内という狭き門です。模試で360位以内に出会う機会を1とすると、720位以内は2、120位以内は3分の1です。それを出現比とします。

出現比
開成 1.000
麻布 2.000
筑駒 0.333

 この出現比さえあれば、最難関校の偏差値は演繹的に求めることが可能です。

開成、SAPIX*1偏差値66

出現比 偏差値 出現率 理論値 実際値
筑駒 0.333 0.018266 70.9 70
開成 1.000 66 0.054799 66 66
麻布 2.000 0.109598 62.3 60

 出現率は、標準正規分布*2確率密度関数から導き出せます。その出現率に出現比を掛けて、標準正規分布表から該当する偏差値を求めます。それが演繹的に求めた理論値になります。実際値は、模試と合否を追跡調査して大手塾が帰納的に算出したものです。
 開成が偏差値66の場合、その3分の1の狭き門である筑駒は71になり、2倍の広き門である麻布は62になります。筑駒は理論値より高め、麻布は理論値より低めです。実際には他の難関校もあるので、単純なモデルどおりにはなりません。それでも、SAPIX は上位層が厚いので、追跡調査で有効なサンプルが多く、理論値と実施値が比較的一致しています。

開成、四谷大塚*3偏差値71

出現比 偏差値 出現率 理論値 実際値
筑駒 0.333 0.005955 75.2 72
開成 1.000 71 0.017864 71 71
麻布 2.000 0.035728 68 67

 開成が偏差値71とすれば、理論値では筑駒が75、麻布が68となります。四谷大塚模試の受験者数を男子で10000人とすれば、筑駒の出現率では60人ぐらいしか対象がいないので、追跡調査も含めて有効なサンプルが少なくなり、偏差値の精度が上がりません。一方、麻布は理論値よりも1低い値です。

開成、日能研*4偏差値71

 開成、麻布、筑駒の偏差値が見事に四谷大塚と同じです。分析結果は四谷大塚と同じ内容になります。

開成、首都圏模試*5偏差値78

出現比 偏差値 出現率 理論値 実際値
筑駒 0.333 0.000852 81.4 78
開成 1.000 78 0.002555 78 78
麻布 2.000 0.005110 75.7 74

 開成が偏差値78とすれば、理論値では、筑駒が81、麻布が76となります。10000人規模の模試で偏差値78は上位25位以内ですから、首都圏模試の難易度では、おそらく満点に近い得点を取っています。追跡調査で有効なサンプルが集まるとは思えません。したがって、開成と筑駒の実際値は同じです。麻布は理論値よりも2程度低くなります。