うろ覚えのドラマ評『素直な戦士たち』 - 結末

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※この記事は10月5日に書いています。

※私がこのドラマを見たのは中学生のときで、中学生の認知で理解した記憶で書いています。記憶から抜け落ちた重要な部分、ほかのドラマと混同した部分があるかもしれませんが、とにかく、ドラマ評を書いています。

 結末というとネタバレ注意なのでしょうが、ネタ元となるドラマが再放送される可能性がないのですから、隠す必要もありません。結末もドラマならではオリジナリティがあります。それがまたドラマの深みを増しています。
 結末のシーンはドラマも小説も衝撃だったらしく、ネットでいくつもネタバレが読めます。目の上のたんこぶになった次男を長男が工事中のマンションに呼び出し、計画的にベランダから突き落として抹殺しようとした結果、兄弟ともどもベランダから転落し、兄は頭を打ち、障害持ち、弟は、手足骨折の大怪我だが、幸い頭は無事。しかも、弟は、あっけらかんと、「すべり落ちそうになった俺を、兄貴は助けようとしてくれたけど、兄貴は運動音痴だから、いっしょに落ちちゃった」と兄の殺意には気づかなかった様子。どこまでも人がいいやつ。
 ドラマでは、長男の動機をどこまで忠実に再現していたか知りません。私はてっきり些細な兄弟喧嘩の結果、ベランダから二人とも過失で落ちたもんだと、原作を読むまで思っていました。ドラマでは故意に突き落としたけど、私が(どうでも良いことだから)忘れていたのかもしれません。ベランダ転落が故意であろうが過失であろうが、どうでも良かったのは、病院での主人公(長山藍子)の演技に圧倒されたからです。
 映像は残酷です。意識不明で回復しても一生車椅子だなという状態の長男を前に、夫(中谷一郎)は、これからは受験のことは忘れてのんびりとやっていこう、と言います。それに対して、主人公(長山藍子)は、泣き崩れながらも、毅然と、「私はあきらめない。私の子供は全員東大に入れる。英一郎(長男)も健次(次男)も、何年たっても何十年たっても。」と言い放ちます。
 ここで、次男に対して初めて母親になったわけです。そして夢が絶たれた長男に対しても最後まで希望を捨てない母親になったわけです。そのときまで、子供を受験マシーンとしてしか扱っていなかった主人公が、母親として本当の子供たちを取り戻した瞬間だと感じました。
 最後のシーンにはいろいろな解釈があると思います。長男がダメだと分かった途端、次男を持ち上げるご都合主義の主人公、長男が半身不随になる現実を認めずに、悪あがきする狂気の主人公。でも、素直に解釈すべきだと思います。母親は次男のことも子供としてずっと気にかけていたし、長男が障害を持つと分かったぐらいで、親が希望を捨てたら、子供に失礼でしょう。親こそ最後まで期待してあげるべきです。主人公と長男には、これからは、東大合格なんかよりはるかに困難で、もっと価値のある人生のチャレンジが始まると思わせて終わります。
 参考までに、原作では、早々と長男を切り捨てて、孫(=次男の息子)を受験マシーンに育てようと妄想する狂気の母親で終わります。(ちょっと、それはないよ、城山さんって思いました。こんな結末じゃドラマにできないし、役を引き受ける女優さんがいなくなるでしょ。)