岡山県の総合選抜と東大合格者数推移

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 12月26日の記事に”初年度東大合格9名の高校”さんを始め多くの方からご意見をいただきました。特に”初年度東大合格9名の高校”さんはコメント欄にも関わらず長文のご意見をいただきました。
 節目節目の東大合格者数を紹介します。残念ながら資料の入手が大変で、合格者数5名以下の年度はほとんど判明していません。古い資料の大半が『東大合格高校盛衰史』からの出展です。

'65 '66 '76 '77 '82 '83 '88 '01 '02 '07 '08
総合選抜 36 23 33 38 37 38 26 - (16) (17) (24)
岡山朝日 (22) (14) (14) (15) ( 9) ( 7) ( 7) ( -) 16 17 17
岡山操山 (14) ( -) ( 9) (12) ( 6) ( 4) ( 5) ( -) - - 4
岡山大安寺 ( 9) (10) (11) (11) ( 6) ( -) ( -) - - 0
岡山方泉 ( -) (11) ( 6) ( 5) ( -) - - 2
岡山一宮 ( 5) ( 9) ( -) - - 1
◎岡山 9 - - 4 1
岡山白陵 - - - 22 18 13 9
  • 1966年:岡山大安寺、総合選抜参加一期生卒業
  • 1977年:岡山方泉、総合選抜参加一期生卒業
  • 1979年:◎岡山白陵、高校募集一期生卒業
  • 1982年:◎岡山白陵、中学募集一期生卒業
  • 1983年:岡山一宮、総合選抜参加一期生卒業
  • 1988年:◎私立岡山、中学募集・高校募集一期生卒業
  • 1990年:◎私立岡山、東大二桁合格達成
  • 1996年:◎岡山白陵、東大二桁合格達成
  • 2002年:総合選抜廃止後一期生卒業
  • 2008年:岡山操山中高一貫一期生卒業

 まず、最初に断るべきは、倉敷市の資料を省略したことです。私立校にとって、倉敷市も通学圏にありますが、倉敷市の公立高校の東大合格者数の資料は断片的すぎてかえって混乱を招くので省略しました。

[総合選抜]
 岡山市は新設公立普通高校を総合選抜制度に加えてきました。岡山一宮が加わった時点で5校に割り振られます。総合選抜制度の元で東大合格者数の合計は40名弱で一定しています。また、東大合格者数は各高校に細分化されてきたこともわかります。制度の理念上は成功していると言えます。ただ、岡山高校の登場と岡山白陵高校の躍進とともに1988年以後崩れ始め、総合選抜最終期卒業生の2001年には6名以上の合格者を出す公立高校はなくなりました。

[岡山白陵]
 岡山白陵は、1976年に中学募集と高校募集を同時に開始して、1979年にまず高入生の実績、1982年に中入生の実績がでました。ただ、『東大合格高校盛衰史』と私の独自調査による資料では、1993年までは単年度で4名以上の合格者は出していません。この状況から、設立当初、岡山白陵岡山市民に進学校として受け入れられていたとは思えません。白陵の姉妹校として関西圏と関西圏からの転勤族が対象だったと思われます。
 総合選抜と、後述する岡山高校と不思議な不振による漁夫の利と、本家、兵庫県の白陵高校のブランド力が効果を発揮したのか、1994年以後、岡山県で独占的な地位を占めてしまいました。これは、総合選抜制度を廃止して県立岡山朝日が猛追し、県立岡山操山中高一貫に進出するまで続きました。

[岡山]
 これは、”初年度東大合格9名の高校”さんから紹介のあった学校です。併設型の一貫校なので純粋な7年周期とは言えない事情がありそうです。高校からも募集しているので、中入生の模試の成績が口コミで伝わると、大学合格実績が出るまえから、優秀な生徒が高校からも入学してきます。
 少なくとも、岡山白陵高校と違い、岡山県民のための新設私立一貫校として評価されていたと思います。首都圏でも東大3名以下を続ける従来校よりも、新設校の人気が出るのは良くあることです。一期生から八期生までは破竹の勢いだったのですが、急速に岡山白陵に地位を奪われてしまいました。
 衰退の理由は良くわかりませんが、首都圏でいうと桐蔭学園の盛衰と何か共通点がないか考えてみる必要があります。

[総合選抜廃止後]
 岡山朝日が、岡山白陵から県内トップ校の地位を奪還し、岡山操山中高一貫校に進出することで、私立一貫校が守勢に回ってしまいました。個人的な見解だと、岡山朝日がトップ校の地位を奪還した時点で、岡山操山が一貫校に進出する必要性を感じません。これは不要な民業圧迫でしょう。東京都のように、高校募集が機能せず、一部の中学受験大手塾が公立中のネガティブキャンペーンを流し、一部の私立一貫校に選民意識と差別意識があるのとは違います。地方ではそこまで中学受験で深刻な教育格差はありません。

[質問についてのコメント]
 上記の情報から各自判断してもらえればよいと思います。ひとつ気になった点があるのでコメントします。

「灘・甲陽など関西の有名私立中学受験に失敗して滑り止めとして入学した生徒が1人も含まれていない」

 中学生にとって下宿生活というのは心理的に相当の負担です。親にとっても、通わせる気がないのに腕試しで受けさせる意義を感じない人は多くいます。受験をするだけで交通費・宿泊費の負担が掛かります。何よりも体力的な負担と、万が一不合格だったときの精神的ショックの弊害もあります。私は、灘や甲陽などを受験していなくても、対策を取れば、潜在的に合格可能な生徒は岡山中学校に相当数いたと思います。