都立一貫校、白鴎ショック

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 2011年度の東大合格発表で最大の衝撃は、白鴎高校です。『サンデー毎日』発表では4名、『週刊朝日』発表では5名です。5名が最新情報のようですが、問題は数ではありません。私は3名以上であれば、驚愕の数字だと思っていました。白鴎高校が最後の東大合格者を出したのは2005年です。それ以前も、2002年以後複数合格*1を出していません。白鴎高校の前身は「東京府立第一女子」で、由緒のある学校です。しかし、東大の合格実績で見ると、1973年に単年度で最大8名の合格者を出し、戦後の累計では168名の合格者を出す程度の学校で、とても東大進学を目的に選ばれるような学校とは言えません。

 私は、埼玉県の進学校を調査していますが、中高一貫校の一期生で東大合格者を出すことの困難さを知っています。1名出せれば順調、2名であれば大金星と言っていいでしょう。それは高校受験で十分に難関校と認められた学校も含みます。
 ところが、白鴎は都立一貫校というブランドだけで、160名*2の卒業生からいきなり5名もの東大合格者を出してしまいました。もちろん、白鴎は都立一貫校の先鋒で、入学時には都立志望の優秀層がすべて集中していました。複数の都立一貫校と競合した次年度からは今年度のような実績を出し続けるか疑問です。しかし、問題は「都立一貫校」ブランドだけで東大合格者を輩出できることが証明されたことです。これに、かっての都立名門「小石川」「両国」が結びつくと、一貫生の実績が一巡する7年後に20人ぐらいの東大合格者を出してもおかしくありません。

一期生
合格数
校数 校名(年度)
5 1 白鴎(2011)
4 1 西武文理(1999)
2 2 開智(2003)、※立教新座(2006)
1 2 浦和明の星(2009)、※大宮開成(2011)
0 8 校名省略(1998,1998,2003,2006,2006,2008,2009,2011)
※高入生も含む。中入生のみの資料は不明

 首都圏の中学受験で2月3日は、国立・都立の受験日です。今後、都立一貫校の本命率が高まると、私立は2月3日で募集がうまくいかず撤退する可能性も高まりました。何よりも、2月2日で合格を出しても、2月3日で辞退される可能性も高まります。進学を主体にする中堅私立が募集困難に陥ります。一方、難関私立も安泰とはいえません。相手は6年間授業料のない学校です。多少実績が上回っているぐらいでは優位性を保てません。常に倍以上の実績を上げないと無理でしょう。都立一貫校が20名程度でとどまれば、40名を確保すればいいのですが、30名を越えてくると、合格実績で常に優位に立つことは不可能です。おそらく、難関私立校で進学校として生き残れるのは数校ぐらいになります。では、高校募集に活路を見出すとしても、すでに都立重点校が競争力を獲得しつつあり、こちらでも優秀な生徒の募集が困難になりつつあります。
 これは都内だけに終わりません。周辺県の中学受験、高校受験にも及びます。中学受験では、周辺県から見て実績の低迷する都内私立に行かせる価値がなくなってきます。一方、学区の制限で周辺県から都立一貫校を選ぶことはできません。必然的に、都内の私立を敬遠して、地元の私立に流れるか、中学受験を控えて高校受験に向かうかどちらかになります。そうなると、周辺県の中学受験と高校受験の勢力図も大きく塗り替えられていきます。

*1:※(2010/04/02)2001年は2名の合格者を出しています。

*2:※(2011/03/25) 卒業生数160名は中高一貫生の数で、高入生まで含めると240名です。